Journal of Amusement Mechanics

元TRPGプレイヤーがゲームシステムを中心に考察していきます。

TRPGの系譜:ギア・アンティーク(1991)

ギア・アンティーク

ギア・アンティーク

  • 通称:no data
  • 初版:1991年公開(日本)
  • 開発者:伏見健二
  • 世界観:スチームパンク
  • ワールド名:マキロニー地方
  • 通貨:no data
  • 目的:蒸気機関や降魔機関が存在する日常で起こる事件を解決する
  • キャラメイク:能力値RP/職業C/教育機関C/特技C
  • パラメータ:行為判定基本値+特技+幸運
  • 種族:人間
  • 職業:士官/兵士/傭兵/密偵/官僚/警官/技師/整備員/芸術家/大道芸人/記者/思想家/学者/医師/聖職者/探検家/職人/猟師/船乗り/盗賊/商人/労働者/放浪者/貴族/学生/主婦
  • 能力値:体位/筋力/反射/器用/知恵/感応/容姿/身分(8種)
  • リソース:no data
  • ランダマイザー:1D100
  • 判定方法:下方判定(段階的難易度)
  • クリティカル:no data
  • ファンブル:no data
  • 無限ロール:no data
  • 戦闘時間:no data
  • 重量システム:no data
  • ヒーローポイント:no data
  • キーワード:幸運の風/降魔/教育機関/主婦
  • 参考文献:Wikipediaピクシブ百科事典/ニコニコ大百科
  • プレイ歴:なし
  • 同時期の作品:ふしぎの海のナディア

産業革命期のヨーロッパをモチーフとするジャンルに魔法や妖精のエッセンスも取り入れたスチームパンクTRPG蒸気機関で活気付く世界の中で、平穏な日常からふとしたきっかけで不思議な大冒険に巻き込まれていくような世界観で、わかりやすく「ラピュタ」と形容されることも多い。行為判定はオーソドックスなパーセンタイルロールを用いるが、難易度判定は難しい方から順に1/3, 1/2, 基本, x2, x3, x4, x5の7段階存在し、行為判定基本値以下の目を出せば成功とする基本判定のほか、難易度が高い場合は複数回ロールですべて成功する必要があり(and成功)、難易度が低い場合は複数回ロールのいずれかが成功すればよい(or成功)、といった「カウント」と「有利」メカニクスを組み合わせた特殊な判定法である。判定基本値に修正を加えることなく難易度を調整することができる特徴がある。また、「幸運の風」システムは判定に失敗した際に幸運値以下の目を出すことで無条件で成功とするルールで、「幸運の風」判定を行うごとに幸運値は累積して上昇するため、ゲームの進行に伴って成功確率が上がっていくが、一定値を超えるともれなくアクシデントに見舞われるという葛藤メカニクスとなっている。

TRPGの系譜:サタスペ(2004)

アジアンパンクTRPG サタスペ

アジアンパンクTRPG「サタスペ」

  • 通称:サタスペ
  • 初版:商業出版2004年、同人作品として1996年公開(日本)
  • 開発者:河嶋陶一朗速水螺旋人と暗転丸と池田朝佳とイケダサトシと泉信行魚蹴と岡野繁浩と齋藤高吉とdczとぺらねこと吉井徹/冒険企画局
  • 世界観:アジアンパンク(世紀末的現代)
  • ワールド名:無法都市「オオサカ」
  • 通貨:J$/ジャリ銭/札巻/札束/トランク/宝箱
  • 目的:犯罪都市でチンピラとなってヤバい依頼をこなす
  • キャラメイク:環境値P/天分値P/性業値R/戦闘力P/個性RF/組織RF/表の顔R/趣味RF/言語C/好みのタイプR/装備C/おたからR/アジトR/宿業(ベーシックカルマ)C/幼業(新人カルマ)C
  • パラメータ:いろいろ
  • 種族:なし
  • 職業(宿業):リーダー/参謀/技術屋/荒事屋/マネージャー/道化師
  • 能力値(環境値・天分値):犯罪/生活/恋愛/教養/戦闘/肉体/精神(7種)
  • リソース(状態値):肉体点/精神点/サイフ
  • ランダマイザー:n x 2D6
  • 判定方法:上方判定(難易度以上の目が出た回数をカウント)
  • クリティカル:なし
  • ファンブル:ゾロ目(ファンブル率による)/ファンブル
  • 無限ロール:なし
  • 戦闘時間:なし
  • 重量システム:なし
  • ヒーローポイント:精神点の消費/ファンブルを取り消し成功とする
  • キーワード:亜侠/スピークイージー/異能と代償/血戦ルール/ケチャップ/ロマンス/ダメ人間
  • 参考文献:Wikipediaピクシブ百科事典/ニコニコ大百科
  • プレイ歴:なし
  • 同時期の作品:グランド・セフト・オートサンアンドレアス

今とは別の世界線の現代アジアを舞台としたクライムアクションTRPGサタスペとは安価で粗悪な銃"サタデーナイトスペシャル"の略で、土曜の夜に急増する銃犯罪を揶揄して名付けられたものである。PCは亜侠と呼ばれるチンピラとなり様々な依頼をこなしながら犯罪都市オオサカを大冒険する。ゲームバランスはシビアで、犯罪がはびこる無法都市で決してヒーロー的強さをもたないPCが悪戦苦闘するという世界観が反映されている。行為判定は、2D6の合計値が難易度以上を出せば成功という上方判定で、ステータスによって複数回判定できることが特徴。成功回数が多いと成功の度合いが上がるがファンブルの確率も上がるというメカニクスはパワープレイ(1991)に類似しており、頻発するハプニングを楽しむことが推奨されている。また、"スピークイージー"と呼ばれるロールプレイ評価システムが導入されているのも特徴である。"ケチャップ"、"血戦"などの世界観を再現した様々な特殊ルールがあるのは、James Bond 007 Role Playing(1983)を彷彿とさせる。サプリメントの「鉄火場と鉄砲玉」は、表紙の構図を含めトンネルズ&トロールズ(1975)のパロディとなっていて面白い。

Legends and Legacies1:概要

イントロダクション:

 ここは剣と魔法の世界。神界と魔界の狭間に存在する地上界で、あなたは冒険者となり、悪魔の脅威から人々を守ろうとしています。悪魔の力は強大なので、この世界で生き残るためには強くならねばなりません。地上界には、伝説の勇者ゆかりの武具や古代王朝の遺産が各地に眠っていると言われています。世界を探索し強大な力を手に入れましょう。世界の平和はあなたの力にかかっています。

 

基本情報1:世界の概要

 この世界は、善神が住む神界、悪魔が住む魔界、そして神界と魔界の間にある地上界から成り立っています。地上界やそこで暮らす人々を作ったのは善神です。悪魔は善神に敵対する勢力で、彼らの直接の攻撃にさらされる地上界にとっての脅威となっています。地上界は、四つの大陸が中央で繋がった十字状の形をした陸地が海上に浮かんだ形をしています。地上界の果ては海が巨大な滝となって奈落に落ちていると言われていますが、誰も確かめたことがありません。善神が遣わした5柱の巨人が四大陸を支えていると言われています。

 

基本情報2:伝説の勇者

 勇敢に悪魔との戦いに挑み、強力な悪魔の眷属を倒して地上界に平和をもたらした冒険者たちを、人々は勇者と呼びました。勇者の物語はやがて英雄譚として語り注がれることとなりました。物語はいずれも、伝説となった彼らはその後何処ともなく姿を消し、誰もその姿を見たものはいない、と締めくくられています。

 

基本情報3:古代王朝の遺産

 2000年以上前に地上界で栄華を誇った王朝です。強力な武具や魔法の開発が一気に進み、人々が悪魔に対抗する力を得たことで、人口増加とともに急速な発展を遂げました。しかし、人々は善神をも凌ぐ力を手に入れたことによる驕りで堕落してしまったしまったことから、善神の怒りの光によって王朝は滅ぼされてしまったと言われています。その後現在に至るまで、かつてほどの力を持った国は生まれていません。王朝の優れた技術や知識は、遺産として世界各地に散らばったと伝えられています。

 

基本情報4:七人の賢者

 善神の光の息吹を得て不老長寿となった七人の賢者が、地上界各地の人里離れた辺境に隠居していると言われています。彼らがどこで何をしているかはわかりませんが、伝説の勇者や古代王朝の遺産に関する情報を持っていると言われており、冒険者は彼らの情報をつかむことを一つの目標としています。

 

基本情報5:冒険者

 プレイヤーキャラクターは冒険者となって、地上界を冒険します。その目的は、富、名声、使命、復讐、好奇心など様々ですが、通常、悪魔やその眷属が冒険者に立ちふさがります。冒険者の能力は、種族(8種)と職業(14種)の組み合わせで決定します(詳細はキャラクターメイク参照)。

 

基本情報6:行為判定の基礎

 10面ダイス1個を振り補正値を足して判定値とします。判定値の合計が6以上で成功、5以下で失敗、11以上で特に優れた成功(クリティカル)です。能力値レベル(プラス)や難易度(マイナス)が補正値です。10の目が出た場合、もう一度10面ダイスを振ってプラスの補正値にします。

 例1:攻撃判定で、攻撃側の器用レベル=2、防御側の敏捷レベル=1、ダイス目が8だった場合、「8+2-1=9(≧6)」で攻撃成功です。

 例2:魔法判定で、攻撃側の魔力レベル=1、防御側の意思レベル=7、ダイス目が10、追加のダイス目が1だった場合、「10+1+1-7=5(≦5)」で魔法失敗です。

 

 

TRPGの系譜:PARANOIA(1984)

PARANOIA_パラノイア

パラノイア【トラブルシューターズ】PDF版 - New Games Order eBook Booth - BOOTH

  • 通称:[$データが利用できません]
  • 初版:1984年(米国)
  • 開発者:Greg Costikyan/Dan Gelber/Eric Goldberg/Allen Varney
  • 世界観:ユートピア系SF
  • ワールド名:アルファコンプレックス
  • 通貨:クレジット_Cr
  • 目的:反逆者を処刑しザ・コンピューターへ自らが反逆者ではないことを証明すること。楽しむこと。
  • キャラメイク:[$データが利用できません]
  • パラメータ:[$データが利用できません]
  • 種族:ほとんどは善良なる市民ですがごく稀にミュータントが紛れ込んでいる場合があります。
  • 職業(サービスグループ):[$データが利用できません]
  • 能力値:[$データが利用できません]
  • リソース:[$データが利用できません]
  • ランダマイザー:[$データが利用できません]
  • 判定方法:GMは常に正しい。
  • クリティカル:[$データが利用できません]
  • ファンブル:[$データが利用できません]
  • 無限ロール:[$データが利用できません]
  • 戦闘時間:[$データが利用できません]
  • 重量システム:[$データが利用できません]
  • ヒーローポイント:[$データが利用できません]
  • キーワード:セキュリティクリアランス/ZAP!ZAP!ZAP!/「気を抜くな! 誰も信じるな! レーザーガンを手放すな!」
  • 参考文献:パラノイア日本語版
  • プレイ歴:パラノイアをプレイすることは幸福です。幸福は義務です。
  • 同時期の作品:テトリス

パラノイアへようこそ!パラノイアは秩序正しく効率的な社会でありあらゆる脅威から保護された都市アルファコンプレックスで約束された幸福を体験するTRPGです。世界観はユートピア系SFとでもいうべきものでしょう。もしディストピアだという市民がいたら反逆者ですのでレーザーガンで処刑してください。

このブログでは様々なTRPGの仕組みを紹介していますが、パラノイアにおいてはあまり賢明なアプローチとは言い難いでしょう。パラノイアでは、他のTRPGのように分厚いルールブックを最後まで熟読するよう要求することもありませんし、セキュリティクリアランスを侵すリスクを考えるのであれば、むしろルールは知らないほうが長生きできるとさえ言えるでしょう。パラノイアと他のTRPGを比較することには意味がありません。パラノイアは楽しい。他のTRPGは楽しくない。なぜならばパラノイアは唯一無二の卓越したTRPGだからです。ザ・コンピューターがそう言っています。ザ・コンピューターは友人です。友人を疑うことは反逆です。

TRPGの系譜:Traveller(1977)

Traveller_トラベラー

  • 通称:no data
  • 初版:1977年(アメリカ)
  • 開発者:Marc Miller
  • 世界観:スペースオペラSF
  • ワールド名:no data
  • 通貨:クレジット_Cr
  • 目的:中高年が広大な宇宙を自由に旅する
  • キャラメイク:能力値R/入隊C&R/生存判定R/任官・昇格R/技能C&R
  • パラメータ:能力値+技能+クレジット
  • 種族:ヴィラニ/ゾダーニ/ソロマニ/ハイヴ/アスラン/ヴァルグル等
  • 職業(経歴部門):海軍/海兵隊/陸軍/偵察局/商人等
  • 能力値(UPP):筋力/敏捷力/耐久力/知力/教育度/社会身分度(6種)
  • リソース:no data
  • ランダマイザー:2D6
  • 判定方法:上方判定
  • クリティカル:no data
  • ファンブル:no data
  • 無限ロール:no data
  • 戦闘時間:個人戦闘15秒/Round、宇宙戦闘1000秒/Turn
  • 重量システム:no data
  • ヒーローポイント:no data
  • キーワード:銀河帝国/ジャンプドライブ/Universal Personality Profile/16進数/キャラクター生成システム
  • 参考文献:Wikipedia/化夢宇留仁の異常な愛
  • プレイ歴:なし
  • 同時期の作品:スターウォーズ(映画)

遥か遠未来、惑星探査や恒星間貿易に従事しながら宇宙船で広大な宇宙を旅するTRPG。日本に初めてもたらされた海外産本格TRPGである。基本システムは2D6に修正を加えて目標値以上で成功とするシンプルな上方判定。また、スキルシステムを初めて導入したTRPGとされる。キャラクターの能力を、16進数を利用して6桁で表現しているのがクールである。キャラクターメイキングにおいて、年齢を重ねるごとに判定を行い経歴とスキルを取得するというキャリアパスを再現したのが本作の特徴。必然的に、経験を積んだPCは中高年者となる。加齢によって能力値が低下することもある。一方で能力やスキルの成長システムはなく、金品などの報酬を得るのが”成長”の手段となる。キャラメイクの段階からPCの人生をプレイしている感覚、そしてキャラメイクが終わった時点からPCのセカンドライフとして宇宙を気ままに旅行する人生が始まる。疲れた中年サラリーマンの心に響く設定である。スペースオペラ風でありながら決してヒーローではない主人公は、往年のアニメ宇宙船サジタリウス(1986)を想起させる。

 

 

TRPGの系譜:クリスタニアRPG(1992)

クリスタニアRPG

クリスタニアRPG (D SELECTION) | 水野良とグループSNE |本 | 通販 | Amazon

  • 通称:no data
  • 初版:1992年(日本)
  • 開発者:グループSNE
  • 世界観:ファンタジー
  • ワールド名:クリスタニア大陸(フォーセリア世界)
  • 通貨:ガメル
  • 目的:神獣の民の暮らすファンタジー世界を冒険する
  • キャラメイク:no data
  • パラメータ:no data
  • 種族:no data
  • 職業:ウォリアー/ソーサラー/シャーマン/プリースト/スカウト/レンジャー
  • 能力値:筋力/敏捷度/知力/幸運度/耐久力/器用度/意志力/魅力度(8種)
  • リソース:生命力/精神力/集中力
  • ランダマイザー:1D100
  • 判定方法:下方判定
  • クリティカル:大成功/目標値の1/10以下/命中判定ではダメージ2倍
  • ファンブル:大失敗/100(1%)
  • 無限ロール:なし
  • 戦闘時間:no data
  • 重量システム:なし
  • ヒーローポイント:集中力(要判定)
  • キーワード:神獣/ビーストマスター/集中力判定
  • 参考文献:Wikipedia
  • プレイ歴:なし
  • 同時期の作品:ロマンシング サ・ガ

ソード・ワールドロードス島戦記と世界を共有するフォーセリア世界の大陸の一つ、クリスタニアを舞台としたファンタジーTRPG。隔離世界を生み出した中立の神々「神獣」に付き従う神獣の民と、外の世界の住人の接触が生み出すドラマが特徴。システムとしては基本クラスとサブクラスを組み合わせるマルチクラス制と、D100の下方判定をベースとしており、オーソドックスで遊びやすいものとなっている。サブクラスでビーストマスターを選択すると本作特徴の神獣の力を行使できる。集中力判定に成功すれば成功段階を1つ上げることができるという条件付きのヒーローポイントのようなメカニクスを採用している。タイトルの語感の美しさは、同時期にリリースされたロマンシング サ・ガのローザリア首都クリスタルシティを彷彿とさせる。

行為判定のメカニクス

行為判定のメカニクス

 

行為判定とは、キャラクターの行為行動の成否を判定するルールである。TRPGが、プレイヤーが自由に物語を紡いでいくゲームである以上、キャラクターが選択した行動が成功するか失敗するかは、その都度判定を行って決定していく必要があり、行為判定のルールはTRPGにおける重要なメカニクスの一つである。

キャラクターの行動には、極めて簡単なもの(石を拾う)から、ほぼ不可能なもの(宇宙を創造する)まで幅広い難易度がある。成否が常識的に明らかのものは通常は行為判定を省略するが、そうでないケース、つまり成功するか失敗するかが予想できない、勝敗が拮抗したケースにおいては、行為判定が大いに活用される。宝箱に仕掛けられた危険な罠の存在を熟練した盗賊が見つけることができるのか、館の番人との駆け引きに勝利して有益な情報を聞き出すことができるのか。要所で要求される行為判定は、TRPGの華と言えるだろう。

なお、戦闘時の行為判定を戦闘ルールとして別に管理しているTRPGは多く、広義の行為判定と言える。特に、ファンタジー系のTRPGでは戦闘ルールが充実しており、基本的な行為判定ルールとは別に、戦闘に特化したルール(例えば、移動、魔法、射撃、重量制など)を組み合わせることで、戦闘時の緊張感を再現しつつ多彩な戦術に対する公平性を構築しようとしている。ここでは、一般的な判定に用いるメカニクスについて触れ、戦闘ルールについては論じない。

この項では、国内外の65種類のTRPGシステムの行為判定の種類を判定方式に基づき8種に分類し、各分類について説明する。

 

1. ダブル(上方判定)

ダイス2個の合計と補正値による修正で得られた値が、目標値(難易度)以上であれば成功とする判定メカニクスである。ダイス1個(シングル)と比較して、ダイス2個の合計値を使用することで期待値に分布が生まれ、成功確率を予測しやすい。また上方判定の特徴として、成功の度合い(どの程度うまく成功したか)が数値として明確に表現できることから、対抗ロールの処理がしやすいのもメリットの一つである。後に述べるパーセンタイルロールやカウントではこの処理が難しい。

行為判定としての採用率は36.9%と最も採用率が高く、汎用性が高いメカニクスといえる。使用されるランダマイザーとしては2D6が圧倒的に多く、代表例としてはトンネルズ&トロールズ(1975)やソード・ワールド(1989)、汎用システムであるWARPS(1987)、MAGIUS(1995)、サイコロフィクション(2008頃)を採用した各種システムが挙げられる。例外としてはりゅうたま(2007)の2DX(能力に応じてダイスの種類を変更する)が挙げられる。意外にも2D10を使ったダブル(上方判定)は見当たらない。

行為判定のメカニクス決定に困ったら、とりあえずダイス2個の合計値を使った上方判定にしておけば間違いないと言えるほど、長い歴史で愛用されている。

 

2. シングル(下方判定)

ダイス一個の値が目標値以下であれば成功とするメカニクスである。採用率は26.2 %で特に海外製TRPGに多い。このカテゴリは実質的にD100を用いたパーセンタイルロールメカニクスである。ダイス1個の一様分布と100分率を組み合わせることで、成功確率を直感的に理解できることが最大のメリットである。パーセンタイルロールでは、D100と呼ばれる100面ダイス(実際には10面もしくは20面ダイスを2個使用し片方を10の位もう片方を1の位として読む)をランダマイザーとして使用する。PCの能力を代表するパラメータがそのまま目標値のベースとなり、目標値(パラメータ)以下の数値を乱数が示せば成功となる。状況によって目標値に対して加減乗除の補正が付与される。

なお、上方判定と下方判定の違いについて考察すると、最も単純なものとしてはランダマイザーが高いほうが嬉しいか、低いほうが嬉しいかによって生じるプレイ感に差がある。更には、上方判定が、世界に普遍の目標値(難易度)が設定されておりランダマイザーがその期待値を規定し能力値やスキルボーナスが補正を加えるのに対し、下方判定は個人の発揮能力に注目し目標値自体が変動する、というコンセプトの違いがある。また、上方判定の目標値には上限がないのに対し、下方判定は目標値の限界(目標値1)が存在する。そのため、上方判定を採用しているシステムはヒロイックなTRPGに向いている一方で、下方判定を採用しているシステムはリアリスティックな印象を与える。

シングル(下方判定)の代表例としては、汎用ルールであるベーシックロールプレイングを採用したRune Quest(1978)やクトゥルフの呼び声(1981)のほか、Power & Perils(1983), Warhammer Fantasy Roleplay(1986), Middel-earth Role Playing(1986), Ecrips Phase(2009)などが挙げられ、海外製TRPGに多い傾向がある。国産TPRGの例としてはRabits & Rats(1987), アサルトエンジン(2012)がある。

 

3. 個数カウント

複数のダイスを振って条件を満たしたダイスの数を数えるメカニクス。目標値より大きい出目をカウントするパターンと目標値より小さい出目をカウントするパターンの両方があるが、カウント数が多いほど成功の度合いが高いという意味では、いずれも上方判定に属すると言ってよいだろう。大量のダイスをバラまく爽快感が魅力である。

カウントのメリットは、そのダイナミックさにもかかわらず判定値が暴れない(システムとしてバランスがとりやすい)点にある。一方で、一定のダイス目以上(以下)をカウントするとうことは、以上(以下)以外の情報は不要(コイントスの表裏で事足りてしまう)ということであり、ダイス目の意味が弱くなってしまう欠点がある。これに対しては、クリティカルやファンブルメカニクスを組み合わせるなどの追加ルールで、情報の浪費をある程度補うことができる。

採用割合は9.2%であり、代表例としてはShadowrun(1989)、天羅万象(1996)、Lady Blackbird(2009)、エモクロアRPG(2021)があり、世界観に特徴のあるTRPGに多い印象がある。トリッキーなプレイ感と相性が良いのかもしれない。

 

4. シングル(上方判定)

ダイス1個と補正値の合計が目標値以上であれば成功とするメカニクス。元祖TRPGであるダンジョンズ&ドラゴンズで採用された行為判定方法であり、長い歴史がある。シングルダイスは、ダブルダイスと比べるとランダマイザーが一様分布であり、ダイス目の影響を受ける度合いが高いため、ギャンブル性が強い。

ちなみに、TRPGの行為判定のコンセプトは、ランダマイザーベースで設計するか、能力値ベースで決定するかによってプレイ感が異なる。前者は幅が広く分布が一様のランダマイザーを使用することでダイス目の影響が大きく、後者はランダマイザーは単なる乱数発生装置であり影響が少ない。例えば、1D20をランダマイザーとして使用する場合、期待値の少し上である11を標準的な目標値とし、平目(補正値を加算減算しないダイス目)でほぼ成功率が50%となるように設定すると、五分五分の勝負を能力値ボーナスなどで判定を有利にするイメージで設計できる。これに対して、能力値と難易度が対応しているシステム、つまり能力値10のPCは難易度10の行為を成功することができることが目安になっているシステムでは、ランダマイザーの影響は小さく、あくまで不確定要素は演出の一部の位置付けとなる。どちらのコンセプトでデザインするかでプレイ感は異なる。

シングル(上方判定)の採用率は9.2%であり、代表例としてはダンジョンズ&ドラゴンズ(1974)やその系譜を引き継ぐPathfinder Role Playing Game(2009)などがある。汎用システムであるD20システム採用のTRPGが母集団に含まれていれば、さらに採用率は増えていただろうが、以外に採用しているシステムが少ない印象である。これは版権の影響か、大御所TRPGとの差別化を図るために避けられているか、行為判定におけるランダマイザーの影響が大きい点が敬遠されているのかもしれない。そのほか、1D6を使用したものとしてはスペオペヒーローズ(1992)(ただし戦闘ルールでは複数のダイスを使用した上方判定となる)、1D10を使用したものとしてはワースブレイド(1988)がある。また、特殊な例としては、ランダマイザーにトランプを使用したトーキョーNOVA(1993)があるが、数札の数字に能力値修正を加えた値が目標値を達成すれば成功となるシングル上方判定の一種と言える。

 

5. 選択

複数のダイスを振り、最も有利となるダイス目を選択するメカニクス。ダイスの数は複数が前提となり、PCの能力が高かったり有利な状況であればより多くのダイスから出目を選択することができる。多くのダイスを振ることができる爽快感がありつつ、あくまで得られるランダマイザーは使用したダイスの上限下限内に限定されるため、判定値が暴れないメリットがある。

採用率は6.2%であり、代表例としてブレイドオブアルカナ(1999)、ダブルクロス(2001)、神話創生RPGアマデウス(2015)、虚構侵食RPG(2022)などがある。また、D&D第5版の有利と不利ルールやMAGIUS(1995)の技能判定のように、他の基本メカニクスと組み合わせて使用することも可能である。

 

6. トリプル

3個のダイス目の合計を目標値と比較して行為判定を行うメカニクスである。ダブルの発展系であり、より正規分布に近い期待値が得られるほか、単純に振るダイスの数が多い楽しさがある。

採用率は3.1%であり、汎用システムであるGURPS(1986)、蓬莱学園の冒険!!(1991)が挙げられる。いずれも3D6の下方判定である。トリプルの上方判定がない理由は不明である。

 

7. マルチプル

複数個のダイス合計値を目標値と比較して行為判定を行うメカニクスである。ダブルやトリプルと異なりダイスの数は決まっておらず、PCの能力や状況によって振るダイスの数は変化する。

採用率は3.1%であり、パワープレイ(1991)やグランクエスRPG(2013)が例として挙げられる。いずれもnD6の上方判定である。

 

8. 特殊

独自のダイス処理を行うもの、ダイスを使用しないものなど、分類が難しいものをまとめて特殊とした。採用率は6.2%。

汎用システムのアップルベーシック(1990年頃)は、ファクター(能力値)もしくはスキルに応じた回数2D6を振り、ゾロ目が出た数をカウントし、多いほど達成値が高いという特殊なメカニクスを採用している。個数カウント(上方判定)の一種と言える。

CLAMP学園TRPG(1997)はトランプをランダマイザーとして使用するが、赤いスートが成功、黒いスートが失敗であり、いかなる行為も50%の成功率となる。いわばコイントス(表裏)メカニクスである。

Aの魔法陣(2004)は能力を数値でなく言葉で表現し、難易度を超える数の有効な成功要素を言葉で説明して行為判定を行う。成功要素が不足する場合はnD6ダイスによる判定を行うが、ギャンブル性が高く補助的な位置づけとなっている。シングル(上位判定)の一種であると言える。

ストリテラ(2022)はランダマイザーを使用しない。優れた演技をした場合に得られるポイントの総数で最終的な勝敗が決定する。乱数のない達成値の対抗判定(上位判定)と言える。