Journal of Amusement Mechanics

元TRPGプレイヤーがゲームシステムを中心に考察していきます。

コラム:PMDSマトリックス

TRPGにおいて「能力値」は使い勝手が良いメカニクスであることからしばしば採用される。能力値には、例えば体力/知力/幸運などの項目があり、それぞれが数値で表現される。どの能力値を採用するかはシステムデザイナーの裁量であり、TRPGの個性が表れる。

能力値の数が少ないシステムの場合、できるだけ多様なプレイヤーキャラクターの個性を表現するためには、それぞれの能力値の違いは明確でなければいけない。例えば、心/技/体は三つの能力値で全く違う概念を説明するのに適している。最も単純な能力値は肉体/精神の二種類として表現できるかもしれない。ただし、シンプルすぎるためか、このようなTRPGシステムは今のところ見たことがない(オリジナルTRPGではあるかもしれない)。シンプルなことは大きなメリットだが、プレイヤーキャラクター間の多様な個性を表現することは難しく、プレイを重ねるに従って似たようなキャラクターができやすくなる。この場合、スキルなどの他のメカニクスを併用することでキャラクターの差別化を行うことができる。一方、多数の能力値を採用するシステムの場合、能力値だけでも幅広いプレイヤーキャラクターの個性を表現することが可能になり、数多くの能力値を用いてキャラクターを創造することは魅力的な一面はある。しかし、①複雑性が増す、②能力値の使用頻度にばらつき(当たり外れ)が生まれる、③能力値同士の性質に重複が生じやすい(どれで行為判定すれば良いかという悩み)、というデメリットも生じうる。平均的な能力値の数は約6種類である。

ファンタジーにおける「剣と魔法」に代表されるように、肉体的な強さと特殊能力による強さという二種類の相反するアプローチを持つことはTRPGでは一般的である。これを"Physical_物理的"ー"Mental_精神的"の軸として表現できる。一方、能力値の別の観点として、攻撃(能動)と防御(受動)、すなわち現状を自力で変化させる性質のものと、外敵から抵抗し現状を維持する性質のものがあり、これを"Dynamic_動的"ー"Static_静的"の軸として表現することができる。それぞれの能力値はこの二軸で描くマトリックスのどこかの位置に表現できると考えるのがPMDSマトリックスのコンセプトである。

I) 物理的動的象限_Physical-Dynamic Quadrantの例

 筋力_Strength/敏捷_Agility/器用_Dexterity

II) 物理的静的象限_Physical-Static Quadrantの例

 耐久力_Constitution/体格_Size

III) 精神的動的象限_Mental-Dynamic Quadrantの例

 知性_Intelligence/魅力_Charisma:

IV) 精神的静的象限_Mental Static Quadrant の例

 精神_Will/教養_Education/共感_Sympathy